薬より説明たっぷり

丹波新聞で連載中の「ママちゃん先生の診察室から」を順次掲載していこうと思います。

2018年9月2日掲載

薬より説明たっぷり


10年前から山南町にある父の診療所に週1回来ている。それまで大人の心臓を専門に診ていた。病院を走り回って数年が過ぎ、中堅医師と言われるようになる頃、父の診療所を手伝うことになった。高校生のころから家族を丸ごと診るドクターになりたいと思っていたからそれは願ったり叶ったりだった。

 西宮から片道70キロの遠距離通勤だ。70キロの距離のせいか、西宮と丹波では季節が2週間違う。西宮で桜を見て、丹波でもう一度桜を見る。西宮で紫陽花を見て、丹波でもう一度見る。それはとてもぜいたくなことだ。  

 祖父・父にならって0歳から100歳までの家庭医としてなんでも診ようと思う。予防接種で「初めまして」。1歳前後から3歳くらいまでしょっちゅうやってきた子供たちも4歳をすぎると体が丈夫になり、再び予防接種でしか会わなくなる。
 わたし自身が子供を産みママちゃん先生になってから、お母さんたちに病気について正しい知識を持ってほしいという気持ちが強くなった。なので診察は、薬より説明たっぷり。「機嫌がよい」はお母さんが一番気づく大切な観察ポイントだ。子供の機嫌が悪くなければ、高い熱でもさほど心配はいらない。お母さんの不安を取り除くことがわたしが子供にできる最良の治療だ。


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