別れと出会い


 

昨年末、わたしは12万キロ近く乗った青いミニバンとお別れしました。次女が生まれる2週間前に納車されたその車をわたしは「小夏」と名付けました。小夏はどこにでもついてきてくれたし、たくさんの荷物とわたし達を安全に目的地まで運んでくれるよい相棒でした。

こすったりぶつけたりしてしまったときも文句ひとつ言わず、子どもの笑い声もわたしの歌声も、お菓子のカスも時に涙も全部内包する心地よい空間を作ってくれました。いつも自宅に帰りつくと「小夏、今日もありがとう」とハンドルをなでて労ったものでした。

3月は別れと出会いの季節。卒業、入学・就職などで実家を離れる人も多いでしょう。昨年以来のコロナ感染症で、謝恩会や卒業旅行もできなくなった人も多いでしょう。仲の良い友達と十分なお別れができないのは寂しいだろうし、初めて出会った人とお互いを知っていく機会がなかなか持てないのも不安だろうと思います。今は仕方ないことだろうけれど、別れと出会いの機会に十分な時間を割けないことは本当に残念なことです。

きっと、小夏は今頃ぴかぴかにしてもらって、別の家族の相棒になっているのだろうと想像します。

そしてわたしはというと、寂しい気持ちでお別れしたのに、新しい相棒もすっかり気に入ってご機嫌なドライブを楽しんでいるのです。